① Welch Allyn社製 FDT視野計 (frequency doubling technology) スクリーナーは、ハンフリー視野計よりも感度が高く、早期の視野異常を短 時間で検出できます。
- 原因不明なのに治療法があるのですか?
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治療法はあります。緑内障は原因不明の病気です。何故網膜・視神経の細胞が障害を受け減少してゆくのかは分かっていません。通常、原因が分からない病気には治療法がありません。しかし緑内障の場合には、原因に全く関わりなく、眼圧(眼球の圧力)を下げることによって病気の進行を遅らせることができることは昔から分かっていました。従って、眼圧を下げてゆくのが緑内障の唯一の治療法で、通常は点眼薬で眼圧を下げていきます。
眼圧降下剤と呼ばれる点眼薬は数種類あり、重症例や点眼薬に反応の悪い例では数種類の薬剤を併用していきます。それでも眼圧降下が不十分な場合は内服薬を併用してゆきます。さらなる治療が必要な場合は、眼内の水の流れを調節している線維柱帯という部分をレーザーで治療(LTP: Laser Trabeculoplasty)することにより眼圧降下を目指します。それでも眼圧コントロールが困難な症例には、手術(Trabeculectomy)を行う場合があります。
- 悪くなった病気は良くなるのですか?
- 残念ながら、どの治療法も進行を遅らせることしかできません。つまり、悪くなってしまった視野をよくしたり元に戻したりすることはできないのです。失われた網膜・視神経の細胞を取り戻すことができないからです。従って、早期発見、早期治療が大変重要になるのです。
- そんなにゆっくり進なら悪くなるまで治療しなくても良いのではないですか?
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緑内障の進行は非常に緩徐で、年単位で進んでゆきます。しかし発見された時点で既に相当進行している場合も多く、しかも上記のように一度失われた視野は二度と取り戻すことができません。病気が見つかった時点での状態をできる限り長期に保つことが治療の目的となります。そのためには、できる限り早く治療を開始することが大切です。
また、もう一つの大きな問題は、二つの意味の「個人差」です。一つは病気の進行の速さの個人差がとても大きいということと、もう一つは点眼薬に対する反応の個人差も大きいと言うことです。病気の進行がゆっくりで、しかも点眼薬で眼圧が大幅に下がる人は大変幸運ですが、逆に病気の進行が速い人に対して処方した点眼薬がどれも効果が低く、次から次へと点眼薬を変更・追加していってもなお眼圧がなかなか下がらない人がいます。そしてこのような情報は、長年眼圧検査と視野検査を繰り返してようやく得られる情報なので、治療開始は速ければ速いほど安心なのです。
- 大学病院などへ行かなくて大丈夫ですか?
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大学病院は、診断が困難であったり、特殊な治療を受けるために受診するところであり、何故受診しなければならないかと言うことについて詳細に記述した紹介状を持って行かなければなりません。確かに緑内障でも大学病院に行ってもらうような特殊なケースはありますが、通常の緑内障であれば大学病院へ行く必要はありません。
むしろ、大学病院が適さないことの方が多くあります。一番の理由は、難治性の患者さんが沢山集まってくる大学病院では、次の診療予約が3ヶ月後、6ヶ月後と言われることが多く、頻回に受診できないために眼圧や視野のデータがなかなか蓄積できないことです。「データの蓄積が全て」と言って過言ではない緑内障にとって、データ量の不足は致命的です。必要な頻度で検査をして貰えて、進行具合や病状について詳しく説明してくれる眼科を見つけることが大切です。
- 緑内障だと分かったらどうしたらいいですか?
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当クリニックでは、緑内障の確定診断がついた患者さんには、以下のような別紙をお渡ししています。上記のように、緑内障だとわかったら点眼治療を始めるわけですが、点眼によってどれだけ眼圧が下がったのかを科学的に評価しながら治療方針を立ててゆく必要があります。そのため、まず患者さんの普段の眼圧を繰り返し測定することから治療の準備が始まります。以下の説明を良くお読みになり、通院の意味と目的を十分理解なさった上で治療の準備を始めて下さい。
「緑内障治療をデザインする®」
点眼治療準備の御案内精査の結果、緑内障に罹患していることが明確となりました。残念ながら緑内障は完治させることが不可能な疾患ですが、治療により進行を大幅に遅らせて、ほとんどの人は失明することを防ぐことができます。しかし、一人一人重症度や進み方が大きく違うため、症状把握のために定期的に多くの検査が必要なうえ、治療方針をその人その人によって個別にカスタマイズする必要があります。つまり「緑内障治療をデザインする®」のです。この一生続く治療の道を患者様に寄り沿っていっしょに歩いて行くのが私たち眼科医療従事者の勤めと考えています。
治療を 成功に導くためには、患者様と私たちの間に強い信頼関係を築くことが非常に重要ですので、不安点や不明点を放置せず、遠慮なく質問して問題をいっしょに解決して行きましょう!治療の第一歩は御自身の平常時の眼圧の平均値(ベースライン)を知ることです。眼圧は毎日変動し、中にはその変動幅がとても大きい人もいます。治療効果は、点眼薬によって眼圧がベースラインを基準としてどれだけ下降したかによって判定されます。この基準となるベースラインは、緑内障の治療にあたり、これから一生御自身についてまわる大変重要なデータです。したがって、医師に指示された回数をきちんと測定し、平均値と誤差範囲を算出してもらわなければなりません。測定をくりかえしている期間は 治療が始まらないので不安に思う方もいますが、緑内障は「超慢性」に進行する病気ですから数ヶ月間の間に進行することはありません。治療を早く始めることより正確なベースラインを得ることの方が遥かに価値があります。 以下に眼圧測定の要点を記します。
- ① 健康保険では一月に2回までの測定が認められているので、例えば10回測定す るには5ヶ月余りかかります。
- ② 測定と次の測定の間隔は問わないので、時間のあるときに院長診、代診を問わず 測定のために来院していただいてかまいません。
- ③ 眼圧測定の他、視力や視野(FDT・HFA・imo・MP-3など)、光干渉断層計(OCT)、眼底カメラなどの各種検査も並行して行なっていきます。
- ④ 指示された回数を測定し終えると、算出されたベースラインをもとに点眼薬が処方されます。その後は、点眼薬をしている状態でどれくらい眼圧が下降するかを測定して行きます。点眼がきちんと行われていなかったり前日に点眼をせずに来院すると、その日の眼圧はカウントすることができませんので、必ず毎日の点眼をおこたらず、点眼薬の残量には十分余裕をもって来院して下さい。
- ⑤ 十分な眼圧加工効果が得られない場合には、点眼薬の種類が増えたり内服薬を併用したり、レーザーによる治療が必要となったり、入院しての本格的な手術が必要になる場合も稀にあります。
眼科かじわらアイ・ケア・クリニック
視野検査予約のご案内
緑内障の診療の中で、眼圧検査と並んで重要なものが視野検査です。
当院には視野検査の機械だけでも以下の4種類のものがあります。- ① FDT
- ② ハンフリー視野計
- ③ imo視野計
- ④ MP-3
① FDTとはどんな検査機器ですか?
縦のしま模様を見てボタンを押してもらう検査(FDT)を行ってもらいます。FDTは非常に感度が良く、初期の緑内障を診断するために大変有効な手段です。また検査時間も比較的短く、暗い暗室にこもらなくても可能です。しかし、しま模様のでる正方形の大きさよりも細かい領域を検査したり、精密な視野障害の評価や進行の度合いを見たりするには「ハンフリー視野計」と「imo視野計」による検査の方が適している場合が少なくありません。FDTと組み合わせることにより、より正確な病状評価が出来るだけでなく、検査回数を減らして患者さんの負担を軽減するにも大変有効な方法です。
②③ ハンフリー視野計とimo視野計とはどんな検査機器ですか?
この2種類の検査機器はFDT同様、どれだけ視野障害が進んでいるかを調べますが、数値として定量的に測定するのに大変有効な検査方法です。ハンフリーは世界で最も広く使われている自動視野計ですが、暗室にこもって行わなければならないという欠点があります。imo視野計は暗室でなくても検査が行えることと、両眼同時に行えるという利点があります。
しかし、ハンフリーもimoも、結果の善し悪しが患者さんの集中度に大きく左右されるので、やるたびに微妙に良かったり悪かったりします。従って、数回の検査を繰り返して初めて評価が出来ますので1回1回の検査結果には拘らず数回の検査結果をまとめて考えていきます。また、検査中に集中できないと居眠りしてしまう患者さんもいて、せっかくの検査が台無しになってしまうこともありますので、検査前には十分体調を整えて、前日には十分睡眠を取って来院して下さい。
また、視野障害の広がり具合によって検査する範囲が異なり、30°という範囲が最も一般的ですが、10°や60°という範囲の検査が必要な患者さんもいます。重症な患者さんほど、視野検査をしなければならない回数も増えてしまいます。
④ MP-3とはどんな検査機器ですか?
緑内障は「視野が欠ける病気」と言われ、その初期は、中心から離れた視野からかけてくるので患者さんは異常に気づくことができません。病気が進行して視野障害が中心部分に広がってくると異常に気づき始めます。特に末期になってくると、ものを見る中心部がどれくらい障害されているのか、あるいはまだ余裕があるのかの判断は上記①-③の視野計ではすることが困難です。この評価は、現在のままの点眼治療だけで良いのか、内服薬やレーザーが必要なのか、さらに本格的な手術治療が必要なのか、次のステップに進むべきか否かの重要な判断につながります。
MP-3は、まだ日本でも数十台しか導入されていない特殊な視野計で、見たこともない眼科医も多くいるほどです。MP-3は、この大事な視野の中心部(ここが見えなくなったら字が読めなくなる場所)への病気の進行度合いが非常に精度高く調べられる優れた検査機器です。
しかし、非常に暗い光を使って検査を行うので、患者さんにも慣れが必要な場合があります。それを補ってあまりあるほどの重要な結果を出してくれる機器で、これによって患者さんにとっても私たち医師にとっても重大な決断が下せるようになります。
☆☆☆視野検査予約の重要性☆☆☆
視野計による視野検査は、どれも長時間かかるため、全て予約で行っています(受付で予約を取らないと検査が出来ません)。上記の理由から、年に複数回の検査が必要ですが、検査の間隔は等間隔で行うことが重要で、医師から告げられた時期に検査の予約を入れるようにして下さい。半年先まで予約が埋まってしまうこともありますので、例えば「3ヶ月ごとに視野検査が必要です」と言われた場合は、ご自分で向こう2回分くらいの視野検査の予約を受付・会計時に取るようにしていただくと良いでしょう。
緑内障は非常に進行した人や末期の患者さん以外は自覚症状がないので、ついつい検査をきちんと受けなかったり点眼を疎かにしてしまう方がいらっしゃいます。ご自分の病気としっかり向き合うことの出来る人と、そうでない人では、将来の視機能に大きな差が生じてしまいます。私たちは患者さんに最も良い方法を提示することしかできず、実際に検査と治療を成功させるか否かは患者さん自身にかかっていることを忘れないで下さい。
② Zeiss社製 ハンフリー視野計の最新鋭 モデルHFA840。視野障害を正確に記録し障害の進行を判断することが出来ます。緑内障の視野検査のスタンダードであり、あらゆる視野障害を診断します。
③ CREWT社製 imo視野計。ハンフリー視野計と違い、両眼同時検査や暗室でなくても検査が可能などの特徴があります。
④ NIDEK社製 無散瞳眼底カメラ付きフルオート・マイクロペリメーター MP-3。日本にまだ30台ほどしか導入されていない最新鋭の視野計です。特に、中心部まで視野障害が及んだ重症の緑内障や黄斑変性症の機能評価に絶大な威力を発揮します。眼底像を直接確認しながら刺激光を投影可能な装置で、局所部位の網膜視感度を測定する装置です。