―目の不調の多くは、アレルギー性結膜炎を併発している―
人の身体は、細菌やウイルス等の異物の侵入を感知すると、それを排除しようとする免疫反応が働きます。この免疫反応は外敵から身を守るためのものですが、必要以上の過剰な反応を起こして自分の身を障害する場合をアレルギーと呼びます。本来、花粉やハウスダストなどでは免疫反応を起こさないのですが、アレルギー体質の人は目に侵入した花粉やホコリを異物(アレルゲン)と判断し、免疫細胞(肥満細胞)が過剰に働きヒスタミンなどのメディエーター(伝達の媒介物)を大量に放出します。花粉が原因でこのヒスタミンが結膜表面にある知覚神経を刺激し更に血管を刺激するとかゆみや充血、ゴロゴロとした異物感といった「季節性アレルギー性結膜炎」の症状を発症します。ちなみに、ダニやハウスダストなどがアレルゲンとなる場合は、季節を問わず慢性に経過することが多いので「通年性アレルギー性結膜炎」という診断名がつく事が多くなりますが、結膜や鼻の粘膜は外界に直接接するだけに抗原が侵入しやすく炎症を起こしやすい部位ということがいえます。
また、原因が何であれ、慢性化すると充血やかゆみはあまり起こらずに、「疲れ目」「目の乾き」「なんとなく目の調子が悪い」といった症状で現われ、眼科を受診しても、「眼精疲労」との診断で赤色のビタミン剤が処方されているケースを多々目にします。これはまったく効果がありません。実際、当クリニックを訪れる「自称ドライアイ」の患者さんの7割がアレルギー性結膜炎を発症しており、適切な治療によって症状が改善しています。
特にコンタクトレンズの長時間装用による慢性結膜炎での「ショボショボする」ような不快感は、「ドライアイ」と勘違いされ不適切な目薬をしている人が驚くほど多くいます。まずは、目のアレルギーに詳しい眼科に診てもらうことが大切です。また、長時間の装用を避け、できる限り眼鏡を併用し、レンズ装用をせずに目を休ませる「休眼日」を設けましょう。
アレルギー性結膜炎の有効な治療のポイントは、ヒスタミンの放出を抑制することです。軽症の場合は基本的に抗アレルギー点眼薬(ヒスタミンH1受容体拮抗薬、メディエーター遊離抑制薬)での治療、中程度以上の症状の場合には副腎皮質(ステロイド)ホルモン点眼薬を併用します。ステロイドには強さが3段階ぐらいあり、使い方にはベテラン眼科医の極意があります。結膜炎の程度や広がり、罹患期間、原因物質の違いだけでなく、一人ひとりの患者さんの生活習慣や、医師の指示をどれくらい忠実に守れる人かによっても処方は変わります。さらに症状の重い患者さんには内服薬を併用することもあります。
眼科医も患者さんも、副作用を毛嫌いして水のように弱いステロイドを長期間ダラダラ使い続けるのは、結膜炎を慢性化させる最悪の方法です。 抗アレルギー薬は、即効性のあるものと効き始めるまで2週間程度を要するものがありますが、患者様個別の症状に応じた最適な処方が選択できるよう医師にじっくりとご相談ください。ステロイド剤は即効性があり、症状が強くて辛い時には、本当にありがたいクスリです。
今や4人に1人以上が花粉症を抱えているといわれています。花粉症とは、樹木や雑草の花粉を抗原とするアレルギー症状のことで、体内に侵入した花粉(アレルゲン)を除去しようとする免疫反応が過剰に働き、目のかゆみ・充血・異物感・目の周りやまぶたの腫れのほか、目以外の部位では、くしゃみ・鼻汁・鼻づまりなどの鼻症状、頭痛、咳などの症状を発します。そのほか、食欲不振・不眠・イライラ感・倦怠感・集中力低下などの精神神経症を伴うことがあり、仕事や勉強などの日常に大きな支障をきたすとこになります。
下表は関東エリアの花粉の飛散時期を示したものです。花粉というと春季のスギを思い浮かべる人が多いと思います。確かに2~4月にかけてのスギ花粉は全体の約80%を占めるとされていますが、花粉症を誘発するスギ以外の樹木や雑草の花粉が1年を通して飛散しており、カモガヤなどのイネ科の雑草の花粉は初夏以降、ブタクサ属・ヨモギ属・カナムグラなどのキク科の雑草の飛散は秋にピークを迎えます。
花粉症患者が急激に増えたのは1970年代前半からです。花粉症を発症する人の多くはアトピーや食物アレルギー、小児喘息などのアレルギー体質であることが傾向として示されていますが、70年代高度経済成長期以降の欧米型食生活の浸透、都市部を中心とした住まい環境の変化、ディーゼル排出微粒子などの大気汚染・公害、さらに最近では黄砂やPM2.5など海外からの大気汚染など日本人の生活習慣や環境の劇的な変容と密接な関連があると考えられます。戦後復興の象徴として林野庁が推奨したスギ植林事業が現代人の厄介な病原になってしまっているのは何とも皮肉な話です。
ところで、「花粉症は遺伝するの?」と誰もが気になるところですが、両親ともに花粉症を有病する場合、子どもが花粉症を発症する確率は約40%とする民間の調査データがあります。それは、片親がアレルギー体質の場合の約30%、両親ともにアレルギー体質をもつ場合では約50%が子どもに遺伝するとされる追跡データとも数値上は附合しますので、病気になりやすい体質には遺伝的な要素が大きく関与していることは間違いありません。
―何を、いつ始める?―
花粉症の治療としては、目の症状・鼻炎症状には、点眼薬・内用薬・点鼻薬等の薬物療法が中心になります。クスリに抵抗感を持たれる人もいますが、今や抗アレルギー薬や安全なステロイド薬は絶大な効果を発揮し、症状を軽減させ、快適な生活を送ることができます。何を隠そう、当院の院長やスタッフの多くも花粉症で、クスリの組み合わせで上手に治療し支障なく仕事をこなしています。実は、この「クスリの組み合わせ」がとても重要なのです。
花粉症の自覚症状が現われる前、時期としては花粉が飛散する2週間前を目安に予防的治療を始めることで、症状の重症化を抑えることができます。この時期の早めのスタートがもっとも効果的です。
クスリの使い方で大事なのは以下の3点です。
有効性の高い新薬の開発や改良が進んだことで、最近は正しい治療を選択すれば快適に乗り切れるようになりましたし、適切に組み合わせることで副作用の大幅な軽減もできるようになってきています。
当院では、目のアレルギー以外に鼻症状(くしゃみ・鼻汁・鼻づまり)に対して内服薬や点鼻薬を多数そろえ、患者様個別の症状・重症度・再燃のパターン・ライフスタイルに合わせた処方を行い万全の診療を行っています。
花粉症を発症していない場合だけでなく、すでに発症した人の重症化を防ぐためにもマスク・ゴーグル・帽子などの着用で花粉の侵入を妨げるほか、服に付着した花粉を玄関に入る前に十分に払い落す、春季の洗濯物の部屋干し(除湿器の使用をお薦めします)、うがいや洗顔、朝晩1日2回の洗髪、といった習慣づけで花粉を寄せ付けないことが有効な予防策となります。関東では1月下旬からスギ花粉が飛散し始めますので、早めの対策に心がけてください。
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